うつ病
うつ病は、ゆううつな気分、やる気が出ない、考えがまとまらない、などといった症状があります。誰しも経験するこれらの症状は、普通数時間~数日で自然に持ち直してくるものですが、それらの症状が2週間以上ほとんど毎日続く病気です。何事に対しても心も体も動かず何に対しても興味がなくなり、好きなものすら食べられない、好きなことも楽しめなくなります。また、眠れない、食欲がない、体がだるい、肩がこる、頭が重たい、などといった身体の症状が現れることも多いです。体調不良で病院を受診し、血液検査、心電図、CT/MRIなどの検査を受けても大きな異常は見つからず、異常なしと判断されて適切な治療を受けることなしにうつ病が長引いてしまうこともあります。原因はいろいろありますが、何らかの原因(ストレスなど)で脳内の神経情報伝達が正常ではならなくなるためであり、本人の怠けなどでは決してありません。
治療は休息や精神療法、薬物療法などがあります。
双極性感情障害(躁うつ病)
躁うつ病は、うつ状態に加え、うつ状態とは対極のそう状態も現れ、それを交互に繰り返す病気です。うつ状態の時には病院へ行く人が多いですが、そう状態では周囲へは迷惑をかけがちではありながらも、本人は気分がよく調子がいいと感じていることが多く、なかなか受診しないケースもあります。そう状態には①気分の高揚②自尊心の肥大③短時間の睡眠でも元気④早口で多弁⑤注意力が散漫といった症状がみられ、調子がいい状態にみえても、一方では注意力が欠けていたり、自制心を失っていたりする為、社会的地位や信用を失ってしまうこともあります。うつ状態だけではなく、躁うつ状態を自覚するには、本人だけでなく周囲の人に見守ってもらうことも大切です。10代後半から20代の発症が多く、男女比に差はありません。
原因は明らかではありませんが、遺伝的要因に加え、循環気質といわれる社交的、陽気、寂しがりやといった性格や心理的負担、環境が関与する疾患とされています。
治療は精神療法や薬物療法があります。
認知症(痴呆症)
認知症は、年齢と共に低下する精神活動の範囲を超えて、認知機能が異常に低下する状態を表す言葉で、特定の病気を指す言葉ではありません。以前は問題なくこなせていたことができなくなる病気です。認知症を引き起こす原因となる病気には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、脳損傷、脳腫瘍などいろいろなものがあります。認知症では、記憶などの認知機能が障害されるだけでなく、失禁や歩行障害などの神経症状や、失くしたものを誰かに盗られたと訴えたり(もの取られ妄想)、性格が変化して怒りっぽくなる(易怒性亢進)などの精神症状を伴うこともあります。認知症は病気です。原因となっている病気によって治療法や対処法が異なるため、年のせいだと考えず、早めに専門機関を受診してください。
脳のどの領域に障害があるかによって出現する症状は千差万別ですので、MRI(脳全体の形をみる検査)、MRA(脳の血管の形をみる検査)、SPECT(脳の血流が保たれているかをみる検査)などの検査を行い、障害されていない領域をうまく活用できるように働きかけしていく事が重要になります。
治療では、抗認知症薬により認知症の症状(主に中核症状)の進行を抑制する薬と
周辺症状における対症療法として不眠などの睡眠障害や昼夜逆転などに睡眠薬、不安により行動障害や言動に対し抗不安薬や、幻覚や妄想などの精神病様の症状に対し抗精神病薬に加え、異常な興奮や焦りなどに対し抗てんかん薬などの薬物療法も場合により考慮します。
それらの行動や心理症状は、ご本人にとっては意味のある言動や行動であり、それらをくみ取った適切なケアや非薬物療法での対応が優先的に取られるべきであると考えます。
統合失調症(精神分裂病)
統合失調症は約100人に1人の割合でみられる頻度の高い病気で、主に思春期から青年期に発症します。昔は「精神分裂病」と呼ばれていましたが、2002年からは「統合失調症」という名前に変更されました。自分を非難する声が聞こえる(幻聴)、見張られているような気がする(注察妄想)、自分に関係のないことも自分に関係づけて考えてしまう(関係念慮)、といった幻覚・妄想などの陽性症状の他、何もする気がない(無為)、外に出たくない(自閉)などの意欲の低下・感情の鈍麻など陰性症状といわれる症状がみられ、再発により慢性化すると社会生活が困難になることもあります。また、認知機能も低下して集中力や記憶力が低下することもあります。原因は明らかではありませんが、統合失調症になりやすい素因、環境素因や心理的素因などいくつかの要因が重なって発症すると考えられています。また、ドーパミンの神経伝達を抑制する薬剤によって症状が改善するため、ドーパミンの関与が推測されています。
治療では、抗精神病薬による薬物療法や、精神療法、認知行動療法などが行われています。
強迫性障害
この病気では、自分で無意味だと分かっていても、ある考えがいつまでも頭から離れません。例えば、鍵を閉めたかどうか繰り返し不安になる(強迫観念)、鍵が閉まっているかどうか何度も確認する(強迫行為)、手の汚れが異様に気になる(強迫観念)、手洗いを何度も繰り返す(強迫行為)といったように、行動を繰り返さないと気が済まないなどの症状のため、社会生活に支障をきたします。
治療では薬物療法と認知行動療法を行いながら、落ち着いて治療に取り組めるような環境作りを工夫します。
パニック障害
突然に激しい不安を感じて、動悸、めまい、呼吸苦、しびれ、冷や汗などが出現する発作(パニック発作)を繰り返すため日常生活に支障をきたします。はじめは心臓や呼吸器の病気だと思って一般科の病院を受診することが多く、そこで検査を受けても異常は指摘されません。また、人混みやストレスのかかる状況が契機になることもあり、特に満員電車やエレベーターのような閉鎖的な空間では逃げられないと感じ、また発作はとても苦しく、このまま死んでしまうのではないかと思うこともあり、制御が不可能と感じることから、またあの発作が起きるのではないかという不安が強くなります(予期不安)。そのため、一人で外出ができなくなったり(広場恐怖)、発作が起きた場所を避けたり(回避行動)し、慢性的なうつ状態となって社会生活が著しく困難になることもあります。
治療は、薬物療法や行動療法の他、喫煙、過労、睡眠不足、カフェイン摂取などの生活習慣の改善も重要です。また、曝露療法などの認知行動療法を、薬物療法と組み合わせて治療を進める場合もあります。
全般性不安障害
いろいろな出来事や日常生活について、過剰な不安と心配が長期にわたって持続する病気です。その結果、心身ともに不調となって、日常生活の様々な場面に支障をきたします。ある程度の不安は正常な反応ですが、この病気では非常に強い不安がほとんど毎日のように続き、著しい障害や苦痛を伴います。これらの不安はひとりでに沸き起こり、止めたり注意をそらしたりすることができず、慢性の頭痛、めまい、胃腸症状などのため一般科を受診することが少なくありません。
心身の症状が伴う疾患で、①イライラ感②集中困難③将来に対しての不安④くつろげない⑤発汗⑥めまい⑦緊張性頭痛などがあげられます。
治療では、薬物療法と精神療法の療法を考慮することが大事です。精神療法は認知行動療法や支持的精神療法などがあり、長期的な治療をしていくことが好ましいとされています。
社会(社交)不安障害
他人に悪い評価を受けることや注目を浴びることに対する不安から、過度の緊張や強い苦痛や身体症状(赤面、震え、発汗、動悸などの自律神経症状)が現れ、次第にそうした場面を避けるなど、日常生活に支障をきたします。人前で何かをしなければならなかったり、初対面の人と接したりするとき、最初は不安を感じても時間とともに慣れていくものですが、この病気では、不安を感じ続けたり、過度な不安感や恐怖感を持ってしまい、それらを感じる場所を避けるなど、社会生活に大きな支障をきたします。
治療では薬物療法により不安を軽減させたり、適切なハードルを設定し、徐々に乗り越えていくが大切です。
適応障害
日常のストレスに対応できなくなり、気持ちが落ち込んだり、過度に心配になったり、自暴自棄になるなど普段とは異なる行動がみられたりします。そのため、通常の日常生活や社会生活において支障をきたします。はっきりと原因となるストレスがあり、このストレスが消失してから半年以内に症状も改善します。症状は①抑うつ気分②不安③心配④涙もろくなるといった気分に現れるものの他に、行動に現れる①暴飲暴食②危険運転③無断欠勤④喧嘩などといった衝動的行動を起こしたいという感情に襲われることもあります。また未成年の場合、夜尿症や指しゃぶりのような退行現象となって現れることもあります。
ただし、他の精神疾患の前兆として、適応障害に似た状態が見られることもあります。
治療では薬物療法が主で、それぞれの病型に合わせ、抗うつ剤や抗不安薬を使用します。また精神療法は適応障害の治療手段として非常に有効とされています。
一番は、その発症のストレス因子を取り除くことが根本的な解決となります。
睡眠障害
眠れないという不眠症は代表的な睡眠障害ですが、その他にも、過眠症状がみられるナルコレプシー、睡眠中に呼吸障害がみられる睡眠時無呼吸症候群、睡眠中に異常行動を起こすレム睡眠行動障害などがあります。
不眠の症状として①入眠障害②中途覚醒③早朝覚醒④熟眠障害の4つがあげられます。入眠障害とは、寝つきが悪くなかなか寝られない。精神的な問題や不安を抱えているときに起こりやすいとされています。次に中途覚醒は、よく夜中に何度も目が覚める、一度起きるとなかなか寝付けなくなるといった症状で、日本人の成人の不眠の訴えの中で最も多いとされています。そして早朝覚醒では、朝早くに目が覚める、起床予定時間よりも2時間以上も前に起きてそのあと眠れなくなるといった症状で、これらは高齢者の方に多く見られます。最後に熟眠障害ですが、ぐっすりと眠った感じがしない、睡眠時間を十分にとったにも関わらず熟眠感が得られず、この症状ではほかの不眠の症状も伴っている場合が多くみられます。
不眠症の原因では、暑さ明るさといった①環境要因、年齢や頻尿の②身体的要因、飲酒や喫煙、カフェインの過剰摂取といった③生活習慣要因、そして精神的ストレスや悩みの④心理的要因があげられます。
治療では、薬物療法や精神療法や環境調整などが行われています。
身体表現性障害(心身症)
原因となる身体疾患が見当たらないにもかかわらず、頭痛、下痢、疼痛、発声困難、歩行困難など、さまざまな身体症状を訴える病気で、昔は心身症と呼ばれていました。決して病気を装っているのではなく、本当に何か重大な体の病気があるのではないかと思い込む傾向があります。このため、いろいろな病院を転々と受診しますが、どこの病院でもほとんど異常は指摘されません。実際に症状を引き起こす可能性のある身体疾患が見つかることもありますが、症状の重症度や持続期間を説明するには不十分なことが多いです。
本人は身体症状の苦痛を周囲に執拗に訴えるが、周囲は検査結果などで異常がないために嘘をついているのではないか?と疑いの目でみてしまい、その結果本人が孤立してしまい、ストレスにて症状が悪化するという悪循環を繰り返しがちです。症状緩和に有効な薬や心理療法もありますが、まずは本人の苦痛を周囲が理解してあげることが大事です。
自律神経失調症
人間の身体は、自律神経を構成する「交感神経」(活発に動き回るための神経)と「副交感神経」(夜間や休憩中などにリラックスして休息するための神経)という2つの神経がバランスを取ることにより、身体の機能を一定に保っています。ストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れると、様々な身体症状や精神症状を引き起こします。一般科で検査をしても症状を裏付ける異常は見つからないことが多く、あきらめて我慢している方も少なくありません。
緊張しないといけないのに眠くなることや、リラックスできずにドキドキしてしまうことなどの心身の不調をきたすこともあります。
めまい、頭痛、耳鳴り、発汗、動悸、ほてりや冷え、便秘や下痢、腹痛、性欲減退など全身あらゆるところに様々な症状が現れ、原因不明とされることが多いですが、生活習慣の見直しや漢方薬などが有効なこともあります。
発達障害
子供や思春期の頃に発達障害とは気づかず、成人して社会に出た途端、うまくコミュニケーションが取れないため、職場などでトラブルを引き起こしてしまいます。大人の発達障害の特徴として、 「整理整頓が苦手で、書類の整理ができない」 「誰にも聞かずに勝手に判断してしまう」 「仕事のミスが多い」 「時間が守れない」 「落ち着きが無い」 「コミュニケーションが苦手」 「場の雰囲気が読めない」 「キレやすい」 といったことがあります。 このように自分では真面目に取り組んでいるつもりでもなかなか評価されなかったり、上手くいかないといったことがある場合は発達障害の可能性があります。
こういった症状のせいで、周囲から孤立してしまい、うつ状態や引きこもりになってしまうケースが増えています。
自分の努力不足などと捉えずに、お気軽に一度ご相談ください。当院では心理検査なども可能です。